昭和六十年の八月に、中曽根首相の民間活力導入政策による、国有地払いさげの第一号として、国会議事堂に近い東京都千代田区紀尾井町にある、司法研修所跡地の一般競争入札売却がおこなわれた。結果は、大京観光が一平方メートルあたり八五〇万円、坪あたりにすると約二八〇〇万円で落札し、マンションかオフィスビルを建てる予定だという。周辺には、高級ホテルや公園のある都心の一等地ということで、高値は予想されていたものの、公示価格の約二・八倍という高額売却に、金のはいる大蔵省はニンマリし、地価抑制に力を入れてきた国土庁はシブイ顔と、同じ政府部内でも、まるでちがった反応をみせた。
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われわれ庶民からすれば、総額五七五億円という想像もつかないような金額に口アングリ、「あるところにはあるものだ」と、でるものはため息ばかり。いずれにせよ、これまでも公示価格は、政策的に低くおさえられてきた傾向があったようだが、モノの価格は結局のところ、需給関係で決定されるものだから、ムリをすればホコロビがでてくるということだろう。何年か前にも、公共用地ではないが、国鉄の品川にあった土地が競争入札で売却された。このときは、興和不動産という会社が、坪あたり八〇〇万円ぐらいで落札し、紀尾井町と同じように、赤字に苦しむ国鉄はニッコリし、地価高騰の引き金になると、国土庁あたりはにがりきったものだった。しかし結果は、当時高すぎると批判していた同業者までもが、いまでは安い買いものだった、というぐらいにかわってしまった。品川駅に隣接した、発展のみこめる土地だったからだろう。